バルコニーでの喫煙を規約で禁止できるか

 最近、隣の住戸のベランダやバルコニーからのタバコの煙や臭いに関する苦情が急増しています。特に洗濯物に臭いがつく、健康被害が心配だ、といった声が深刻です。喫煙は個人の自由ですが、他住戸への被害を防ぐために、管理規約を改正して、バルコニーや共用部分での喫煙を全面的に禁止することは可能でしょうか。

 バルコニーでの喫煙は、個人の自由と他の居住者の快適性がぶつかる、非常にデリケートな問題です。結論から言いますと、管理規約を改正することで、バルコニーなど共用部分での喫煙行為を制限または禁止することは可能です。
 喫煙は個人の権利ですが、マンションという共同住宅では、その自由は「他者の生活を著しく害さない範囲」で認められるという考え方が重要です。実際、裁判所の判例でも、この受忍限度を超えた受動喫煙被害が認められています。

 特に重要なのが、名古屋地方裁判所が平成24年12月13日に下した判決です。この裁判では、階下の住人のバルコニー喫煙に対し、上階の住人が精神的苦痛を受けたとして提訴されました。裁判所は、「自己の所有建物内であっても、当該行為が第三者に著しい不利益を及ぼす場合には、制限が加えられる」として、喫煙行為が不法行為にあたると認定し、慰謝料の支払いを命じています。
 この判例は、タバコの煙による被害が単なるマナーではなく、法的な問題になり得ることを示しています。

 したがって、管理組合としては、この判例や受動喫煙防止という社会的な流れを根拠とし、総会の特別多数決議をもって規約を改正することで、「バルコニーなどでの喫煙行為を禁止する」という条文を設けることは可能です。この手続きを経ることで、全住民の快適な住環境を守るための明確なルールを確立することができます。

(回答者:TK)