建物更新(一棟リノベ)決議とは
私は理事会で老朽化対策を担当しています。これまでは建替え(区分所有法第62条)しか多数決で決められる再生策がないと聞いていました。しかし、2025年の法改正で「建物更新(一棟リノベーション)決議」が新設されたと聞きました。これは具体的にどのような内容で、どのようなメリットがあるのでしょうか。また、建替えと比べて決議要件は違うのですか?
2025年区分所有法改正で新設された「建物更新決議」は、老朽化が進むマンションの再生において、建替えに次ぐ画期的な第三の道を開くものです。
この決議の最大の意義は、これまで区分所有法に規定がなかった大規模な一棟リノベーション(建物の機能・性能を向上させる改修)を、多数決で実施できるようになった点にあります。以前は、建物を解体しない大規模改修であっても、区分所有者の一部が応じなければ、民法第251条の「共有者全員の同意」が必要となり、実質的に事業の実行が不可能でした。
建物更新決議が創設されたことで、建替えと同じく区分所有者および議決権の各5分の4以上の賛成があれば、この大規模なリノベーション事業が実行可能になります。さらに、この決議が成立した際には、反対する区分所有者に対し、建替えと同じく適正な金銭補償と法的手続きによって専有部分の権利を整理することが可能になります。
これは、建築費が高騰し、建替えが経済的に非現実的になったマンションにとって、非常に大きなメリットです。特に、京都市のように既存不適格物件が多く、建替えでは現在の床面積を確保できない地域では、建物を維持しながら再生を強制力を持って進める道筋ができたことになります。


