理事会の担い手不足が深刻です。外部のマンション管理士を管理者(理事長)として選任するために、規約の変更や費用負担についてどのような準備が必要ですか。
私は築40年の団地型マンション(200戸)に30年住む70代の女性です。先日まで理事を務めていましたが、高齢化で理事のなり手が全くいない状況です。このままでは管理組合が機能不全に陥ってしまうため、外部のマンション管理士を管理者(理事長)として迎えることを検討し始めました。規約の改正や、外部専門家に支払う費用をどこから捻出するかなど、導入にあたっての段取りを教えてください。
理事のなり手不足は、築年数が経過した多くのマンションが直面する深刻な課題であり、管理組合の機能不全を防ぐために外部専門家の活用を検討されるのは、非常に賢明な判断です。
外部のマンション管理士を管理者(理事長)として迎えるための段取りは、大きく分けて3つのステップで進めるのが一般的です。
第一に、管理規約の改正です。標準管理規約では、理事長は「組合員のうちから」選任すると定められていることが多いため、まず「外部の専門家を管理者として選任できる」旨の条文を追加する必要があります。これは、総会での特別多数決議(組合員総数および議決権総数の各4分の3以上の賛成)が必要な、最も重要な手続きとなります。
第二に、費用の捻出方法の検討です。外部管理者への委託費用は、管理費会計から支出するのが基本です。現在の管理費で賄えない場合は、管理費の値上げを検討する必要があります。そのためには、まず複数のマンション管理士から見積もりを取り、費用の相場を把握した上で、住民の皆様に必要性を丁寧に説明し、合意形成を図ることが不可欠です。
第三に、適切な人材の選定です。マンション管理士と一言で言っても、経験や得意分野は様々です。皆様のマンションが抱える課題を的確に把握し、長期的な視点で資産価値の維持・向上に貢献してくれる、信頼できる人物を選ぶことが何よりも重要です。選定にあたっては、複数の候補者と面談し、実績や人柄、提案内容をじっくり比較検討することをお勧めします。
質問に対する回答としては上記の通りですが、外部の専門家に委託するのは最終的な選択肢の一つであり、その手前の段階で試せることは数多くあります。
1つ目に、理事の負担そのものを軽減する工夫です。
例えば、理事長という重責を外部に委ねるのではなく、顧問契約という形でマンション管理士の支援を受ける方法があります。理事会に同席して専門的な助言を行ったり、大規模修繕工事のような専門知識が求められる特定のプロジェクトだけを支援してもらったりすることで、理事の心理的・実務的な負担を大幅に軽くすることができます。また、規約改正や総会の決議は必要になりますが、理事の労に報いるために役員報酬を導入、あるいは増額することも、なり手を確保する上で有効な手段です。
2つ目に、役員の選任方法そのものを見直すことです。
もし現在の役員選出方法が「立候補」のみに頼っているのであれば、「輪番制(持ち回り)」を導入、あるいは組み合わせることで、公平感を醸成しつつ役員のなり手不足を解消できる場合があります。その際、多忙な方でも参加しやすいよう、WEB会議システムを導入して理事会への参加方法を多様化するなど、時代に合わせた柔軟な運営方法を検討することも、参加のハードルを下げる上で効果的です。
3つ目に、区分所有者全体に、マンション管理への関心を高めてもらうことです。
これが最も大事ですが、管理組合の現状や課題、そして「なぜ改革が必要なのか」という点を、理事会だけでなく広く住民の皆様に丁寧に説明し、危機感を共有することです。広報誌を発行したり、説明会を開催したりしてコミュニケーションを密にすることで、他人事だったマンション管理を「自分たちの問題」として捉える方が増え、協力者が現れるきっかけにも繋がります。
回答者(TK)


