年数が古いマンションで、専有部分の給排水管の漏水事故が増えています。専有部分の配管更新に際し、管理組合として費用負担や工事への立ち入りを支援・義務付けることはできますか。
私は築35年の都心マンション(50戸)に住む70代の区分所有者です。専有部分の給排水管の老朽化による漏水事故が頻発しており、全戸一斉に更新工事をすべきだという意見が出ています。しかし、個人の専有部分の工事に管理組合がどこまで介入して費用を負担できるのか、また、工事のために居住者に立ち入りを求める際の法的な根拠や規約整備のポイントが知りたいです。
築35年での専有部配管の漏水頻発は、個人の問題を超えたマンション全体の重大な課題です。専有部分は原則として個人の責任と費用で管理するものですが、放置すれば階下への漏水被害が拡大し、建物全体の資産価値を著しく損ないます。
まず、工事のための立ち入りについては、区分所有法第6条が基本的な法的根拠となります。この法律の第2項では「区分所有者は、その専有部分又は共用部分を保存し、又は改良するため必要な範囲内において、他の区分所有者の専有部分…の使用を請求することができる」と定められています。今回の配管更新は、漏水事故を防ぐ「建物の保存」行為にあたります。さらに同条第3項で、立ち入りを請求された区分所有者は「正当な理由がなければ、これを拒んではならない」と定められています。
ただし、法律の規定があるとはいえ、実際の工事を円滑に進めるためには、管理規約で「専有部分配管の一斉更新工事」と「そのための専有部分への立ち入り権」を明確に定めておくことが、無用なトラブルを避ける上で極めて重要です。
次に費用負担です。本来個人のものである専有部分の工事に、管理組合の修繕積立金を充当するには、それ相応の明確な根拠が必要です。この場合も、総会での特別多数決議(組合員総数および議決権総数の各4分の3以上)を得て、「管理組合が専有部分の配管工事を一体的に実施できる」旨を管理規約に定める必要があります。
これらの規約改正を進めるには、住民説明会を重ね、漏水の現状と将来のリスクを共有し、全戸一斉更新の必要性について丁寧に合意形成を図ることが第一歩となります。
(回答者:TK)


