2026年8月 マンション管理士実務研修会(レポートを追加しました)
2026年8月マンション管理士実務研修会
2026年 8 月 マンション管理士実務研修会
1.日 時 :8月25日(火) 18時30分~19時30分
2.場 所 :ひと・まち交流館 京都 第3会議室
3.テーマ :相談実務におけるAI(Gemini Notebook)活用の現在
【年月日】2026/08/25
【対象】会員
【日時】2026年8月25日 18:30~
【場所】ひとまち交流館
【レポート】
【実務研修会 総括レポート】
テーマ:相談実務におけるAI(Gemini Notebook)活用の現在 〜事前準備・壁打ち・対面対応における実戦事例報告〜
本研修会は、行政の専門相談窓口に寄せられた実際の2つの事例を軸に、AI(Gemini Notebook)を下調べや資料作成にどう活用したか、そしてAIの出力する「致命的な誤り(ハルシネーションや形式論)」を管理士が実務経験に基づいてどう軌道修正したかを検証する報告会として実施されました。
第1部:【事例1】 6月14日専門相談(27戸)
管理会社からの大幅な管理委託費値上げ要請に対し、契約交渉の妥協点とロードマップを提示した事例。
- 相談概要: 27戸の小規模マンションにて、管理会社から「2年契約の2年目から、管理事務費を月5.5万円から9.5万円(約1.7倍)へ引き上げる」などの段階的な値上げ要求を提示され、合意できずパニックに陥った副理事長夫妻が来館。
- 事前準備とAI活用の理由: 行政の相談調書は外部漏洩が許されない「部外秘」であるため、データ保護が担保されローカルで完結する『Gemini Notebook』に格納して下調べを行いました。AIは数秒で相談の核心や時系列データを整理し、通常3〜5時間かかる照合作業を大幅にショートカットしました。
- AIの初期提案 vs 実務知による修正(壁打ち):
- AIの初期提案:直ちに「他社への相見積もり」を取ることや、妥協案として「1年目は月6,000円の値上げで合意すること」を提示。
- 実務知による修正:27戸の小規模では他社に敬遠されるリスクがある点、また「2年契約の途中での一方的な値上げ要求には法的に応じる必要がない(契約の盾)」という大原則を指摘。現行価格を満了まで維持させ、その満了までの1年間を仕様削減や他社打診の「猶予期間(準備期間)」として活用するロードマップへとAIを軌道修正しました。
- 当日の面談成果: 「契約の盾」という法的な武器と、段階的交渉のロードマップを提示したことで、相談者は「これで理事会に堂々と説明し、交渉を進められます」と不安を解消し、自立して戦う確信を得て帰路に就きました。
第2部:【事例2】 8月9日専門相談(14戸・管理人なし)
物損いたずらを契機とした防犯カメラ設置相談に対し、「運用負担」と「ルールの本質」を可視化した事例。
- 相談概要: 通常契約の契約者用駐車場(元・来客用区画)において、住人の車両に原因不明の「いたずら傷」が発生。いたずら防止のためにカメラ設置を求められたが、14戸・管理人なしという体制での運用・引き継ぎ負担や、管理費値上げへの懸念に前理事長が苦悩して来館。
- 事前準備とAI活用の理由: 国交省の防犯カメラガイドラインから、不要な条文(管理員立ち会い等)をAIに指示して瞬時に削除させ、14戸・管理人なしに最適化した「全13条(および附則)のコンパクトな運用細則案」を秒速で自動生成。また、「設置するプランA」と「設置せずステッカー等で様子を見るプランB」の2軸のメリット・デメリット比較表、スケジュール表を事前に完備しました。
- AIの初期提案 vs 実務知による修正(壁打ち):
- AIの初期提案:安価な「ダミーカメラの設置」を推奨し、また「管理費値上げ(規約改定)には3/4の特別決議が必要」と回答。
- 実務知による修正:ダミーカメラは事件発生時に「カメラがあると思って油断した」と住民から安全配慮義務違反(民法上の損害賠償リスク)を問われる地雷を孕むことを指摘。また、管理費改定は標準管理規約第48条の規定に基づき、特別決議ではなく「総会の普通決議(過半数)」で適法に可決できる実務ルールを指摘し、AIの誤答を叩き直しました。
- 当日の面談成果: 過去の宅配ボックス(世帯月450円)での猛反対された実績を引き出しつつ、カメラを設置した場合の「映像データの厳格な管理責任が、管理人なしの14戸の役員自身に一生のしかかる(ソフト面の負担)」という重みを可視化。お盆明けの理事会へ向けてプランA・B両方のカードを授け、主体的な選択ができるよう促しました。
研修会の総括(AI時代のマンション管理士の価値)
- AIの得意分野: 部外秘データをクローズドに守りつつ、数秒で相談調書から論点を整理し、国交省の膨大なひな形から「14戸特化細則」を瞬時に切り出すなど、事務作業の効率化においては圧倒的なスピードを発揮します。
- AIの限界と地雷: AIは「実務経験のない新人管理士」に似ており、知識を綺麗に並べることはできますが、ダミー設置に伴う損害賠償リスクを見落としたり、決議要件を混同して「特別決議」と誤信したり、時に数値を捏造(ハルシネーション)する危険性があります。また、同じスレッドを使い続けると過去の記憶と混同して誤答を招くため、案件ごとに「新規ノートブック(スレッド)を作成する」という実務上の対策が必須です。
- 結論: AIは「最強の作業助手」にはなりますが、責任を負う「決断者」や「監査役」にはなれません。AIの出した粗削りな回答に対し、生身の管理士が「実務知」をもって厳しく監査・修正を加え、さらに合意形成に向けて住民の感情に寄り添う「翻訳者」として伴走することこそが、管理士の真のバリューであることが本研修会で確認されました。


